糖尿病で治療中の方が、お薬やサプリメント、健康食品などを求めて来られることはかなり多いです。糖尿病は、単に血糖値が高い、尿に糖が出る、合併症がある、だけではない、かなり奥深い疾患です。
糖尿病
血糖値(血液中のグルコース濃度)が高い状態(高血糖)が持続する病気です。
1型糖尿病と2型糖尿病と妊娠糖尿病があります。
1型糖尿病
インスリン(血糖値を下げるホルモン)の出が少ないか、または出ない状態です。
2型糖尿病
インスリンはたくさん出ていても、処理する糖の量がたくさんあり過ぎて、膵臓さんが疲れて( ;´Д`)インスリンの出が悪くなったり、出ていても処理能力(血液中の糖を細胞に取り込ませる)が低下(インスリン抵抗性といいます。覚えなくてもいいです。)したりする状態です。
現代人の発症のほとんどがこちらのタイプになります。
主な原因
- 遺伝(家族に糖尿病になった人がいる)
- 食べ過ぎ・飲み過ぎ(糖質の摂り過ぎ)
- 運動不足
- 睡眠不足
- ストレス
- 肥満
妊娠糖尿病
妊娠中に、ホルモンの影響で高血糖になる状態。(産後は血糖値が落ち着きますが、将来糖尿病を発症するリスクが上がるといわれています。)
インスリンの働きは?
食事を摂って血液中に入ってきた糖(グルコース)を、エネルギーとして利用するために、各細胞に取り込まれるように働きます。
なので、膵臓さんからインスリンが出ない、または、十分な量が出ていても処理能力が低下(働けない)すると、細胞に糖が取り込まれず、細胞が糖不足となり、エネルギーを作れなくなると共に、取り込まれなかった糖が血中に溢れます。
血液中の糖が大量になると、膵臓さんが頑張ってインスリンを大量に出して処理しようとします。それでも追いつかないくらいの糖が流れてくると、血管内に処理しきれなかった糖がずっと流れ続けることになります。通常はずっとインスリンが働いて時間をかけてでも処理しようとしますが、それが続くと膵臓さんが疲れて
「もう無理ぃ~( ;´Д`)」
と、インスリンを出す量が減ってきたり、出せなくなってしまったり、量は出ていても働きが悪くなって、糖を取り込むことができなくなったりします。
高血糖状態が続くと何が起こる?
血液がドロドロになる
↓
血液が流れにくくなり、一生懸命流そうと心臓さんが頑張るため、血圧が上がる
↓
血管が傷つきやすくなる
↓
血栓ができやすくなる
↓
血栓が剥がれて心臓や脳の細い血管に詰まると、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが上がる
特に、毛細血管に影響し、目の網膜や、腎臓などの細い血管の血流が悪くなることで、網膜症や腎症を発症するリスクも上がります。
神経障害も起こり、脚先のしびれに始まり、進行すると手足(手袋、靴下を着けたときの部分)にしびれや痛みが出るようになり、さらに進行すると感覚が鈍くなったり、痛みを感じにくくなります。すると、足を怪我していても気付かず、そこからばい菌が入ってしまい、処置が遅れると、最悪、その部分に壊疽(えそ:組織が死んでしまうこと)を起こして、切断しなければならなくなることもあります。
これら高血糖の状態で起こる網膜症、腎症、神経障害を、糖尿病の三大合併症と言います。
あふれた糖は、腎臓さんが再吸収しきれずに、尿中に排泄されます。浸透圧の上昇により大量の水分と一緒に排泄されるため、尿量が増えます。尿中に糖がたくさん出ると、おしっこが泡立ちます(泡がしばらく経っても消えない)。また、大量の水分が排泄されてしまうため、脱水が起こり、口渇の症状が現れます。
細胞に糖が取り込めず、身体を動かすことに必要なエネルギーを作り出すことができないため、身体が疲れやすくなります(倦怠感)。
筋肉細胞にも影響して、こむら返りを起こすことがあります。
自律神経障害により、便秘や下痢を起こしやすくなります。
これまでの糖尿病症状をまとめると
・倦怠感(疲れやすい)
・多尿・口渇
・こむら返り
・免疫力低下
・高血圧
・便秘や下痢
・網膜症
・腎症
・神経障害
となります。
糖尿病の患者さんはこういう症状があるのだな、ということを頭に入れておきましょう。
すでに治療中の人と、治療までには至っていないけれど、血糖値が高めで医療機関で指導を受けた人では、また対処が変わります(-_-;)。(むっずかしぃ~んですよぉ~、奥が深いんですよぉ~糖尿病って( ;´Д`)
症状の進行度別対処
1.血糖値が高めで、治療までには至っていないけれど、医療機関で指導を受けている人
食事制限や運動をすることで、治療(服薬やインスリン注射など)をしなくても、血糖値を正常値まで下げられる可能性のある人です。
よく聞かれるのが、『血糖値が高めの方に』『血糖値の上昇を抑える』などの特定保健用食品や機能性表示食品などです。
「血糖値が高めと医者に言われたんだけど、何かいいものないかね?」と相談されることもあります。
そこで、すぐに上記のような特保食品や機能性表示食品などをお勧めしますか?
その人が普段から暴飲暴食をして、お酒も毎日飲んで、お菓子やジュースを好きな時に好きなだけ食べて、運動もせずにゴロゴロしているとしたら…?
こういう人は『特保食品などを摂れば、食事制限も運動もしなくても血糖値が下げられる』と誤解していることが多いです。
健康診断や診察で血糖値が高めと指摘された方は、恐らく生活指導(食事制限の方法や運動についての説明)を受けているかと思います。けれど、『食事制限も運動も面倒だな…そういえばテレビのCMでよく「糖と脂肪の吸収を穏やかに」って言ってる商品あったな、あれ試したら下がるんじゃないかな…』と、そこに頼って来ています。
ま ず は …
生活習慣を訪ねましょう。食事制限も運動もしていないようなら、まずはそこから始めるよう促してみましょう。特保食品や機能性表示食品は、食事制限も運動も頑張っているけれど、なかなか血糖値が下がらない、普段は気を付けているけれど、時々外食したり、旅行に行っておいしいものを食べたりしたい、などの場合に、血糖値が急激に上がらないように利用するのは、まあ…有りかな、と思います。ただし、それに頼ってしまって、食事制限も運動もさぼり気味になってしまわないように、助言をすることも忘れずに。
これを食事制限も運動もしていない人が利用すると、「これさえ飲んでいれば大丈夫」と生活習慣を改めるどころか、さらに暴飲暴食、運動不足になり、糖尿病への道まっしぐらです。
健康へのお手伝いではなく、本格的な糖尿病発症へのお手伝いをしてしまわないよう、アドバイスしましょう。
血糖値が高めの方にお薬を勧める場合は、血糖値を上げてしまう成分(※)が配合されていない薬を選ぶようにしましょう。
※・プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、フェニレフリン
・マオウ(麻黄:エフェドリン主体)
2.すでに糖尿病と診断されて治療を開始している人
血糖値をコントロールする治療で、お薬を服用していたり、インスリン注射を打ったりしている方がいます。糖尿病は症状の進行度合いで治療方法も異なります。単に血糖値を下げるお薬だけではなく、合併症が出ている人は、それに対しての治療薬も処方されています。血圧を下げるお薬や、神経障害に伴う症状に対するお薬、眼科薬など、たくさんの種類のお薬を服用、使用している場合があります。
この場合、血糖値を上げる成分が配合されている薬は、もちろんお勧めはできませんが、気を付けなければならないのは、血糖値が下がり過ぎてしまうことです。血糖値を下げる作用のある成分が配合されているお薬を服用したり、特保食品などで血糖値の上昇を穏やかにする作用があるものを摂ったりすると、血糖値が下がり過ぎてしまい、低血糖を起こしやすくなり、危険です。
低血糖の症状
・眠気・ふらつき
・強い空腹感
・生あくび(息を吸わないあくび)
・冷や汗
・振戦(手や足がガクガク震えること)
・意識障害
・昏睡
血糖値を下げてしまう成分(特に注意!)
・アスピリン
血糖値の上昇を穏やかにする特保食品
・グァバ葉ポリフェノール
・蕃爽麗茶
・難消化性デキストリン
・ポリフェノール類 など
他に、血糖値コントロールや合併症に影響してしまう成分もあります。
総合感冒薬
・NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬) → 腎障害・肝障害・血圧上昇など
・プソイドエフェドリン(交感神経作動成分:禁忌)→心悸亢進(心臓ドキドキ)、血圧上昇
鼻 炎 薬
・プソイドエフェドリン(禁忌)
点 鼻 薬
・ナファゾリン → 血糖値上昇
糖尿病治療中の方は、糖尿病特有の症状と、服用している薬の副作用の症状もあり、その症状に対して薬を求めて来られる場合があります。これらの症状は、ほぼ受診勧奨です。
便秘や下痢がひどい
<便 秘>酸化マグネシウムで対応できます(過剰摂取は避けるよう伝えます)。ビサコジル製剤も使用は可能ですが、頻回使用にならないよう伝えましょう。
<下 痢>整腸剤で様子を見てもらいましょう。脱水を起こしやすいので水分補給も忘れずに。また、低血糖にも十分注意。改善がみられない、またはひどい下痢、感染性下痢が疑われる場合は早めに病院を受診です。
全身倦怠感(だるい)
・間違っても当分たっぷりの栄養ドリンクをお勧めしないように。
手足がしびれる
・効能効果に表記してある医薬品がありますが、対処できません。
膀胱炎症状
・市販薬での対処はできません(ボーコレンや腎仙散など)。服用している薬の副作用の可能性が高いことと、感染症なので、早めに病院で診てもらうことをお勧めします。
こむら返り
・芍薬甘草湯で対処できます。他の漢方薬(カンゾウが含まれているもの)の処方がされていないか、または市販薬を飲んでいないかの確認をして、重複による甘草の過量摂取(※)にならないように注意しましょう。
※偽アルドステロン症:甘草、グリチルリチン酸の過量摂取により、ナトリウム貯留(ナトリウムが腎臓から排泄されず体内に貯まっていく=浸透圧の関係で水分も一緒に回収されてしまう)、カリウム排泄の促進により高血圧、むくみ、手足のこわばり、だるさ、動悸、こむら返りなどが起こる。
胃 腸 薬
・炭水化物消化酵素(ジアスターゼ)を配合した胃腸薬 → 糖尿病治療薬の作用が弱まる恐れがあります。
・血糖値が安定していて、腎機能、肝機能等に異常がない方は、上記以外の胃腸薬の使用は可能です。
魚の目・タコ 除去薬
皮膚に傷を作ることになるので、使用できません。主治医に相談してもらいましょう。
このほか、頻尿、目のかすみ、むくみ、高血圧なども、市販薬、特保食品、機能性表示食品、サプリメントなどでは対処できません。