ビタミンもミネラルも体内で作る(合成する)ことができないので、生体を維持する(健康である)ためには、食物からの摂取が必須であることは、理解しておきましょう。偏った摂取にならないよう、バランスも大事ですね。
ビタミン
水溶性ビタミン
水に溶けやすいビタミンなので、水に長時間さらされると溶けだしてしまいます。葉物野菜などは長時間水にさらさないように。たくさん摂り過ぎても、必要な量以外は身体の外に出てしまうので、あまり心配しなくてもよいでしょう。
ビタミンB₁(フルスルチアミン)
主に炭水化物代謝(糖をエネルギーに変えていく過程)に、補酵素として働きます。
※補酵素とは…わからない方はこちら → 酵素
糖質の多いもの(砂糖を使った甘いもの)や、白米、小麦粉を使った食品(パン、麺類)などばかり食べているとビタミンB₁が使われ過ぎて、不足します。不足すると、糖をエネルギーに変えることができず、結果、疲れやすくなります。夏に素麺ばかり食べていると夏バテするのは、こういう原理です。
多く含む食品:豚肉、玄米、ナッツ類、真鯛など。
ビタミンB₂(リボフラビン)
主に脂質代謝に、補酵素として働きます。皮膚や粘膜、爪や髪を作るのに必要なビタミンです。不足すると、口内炎、口角炎、二枚爪、肌荒れ、髪のハリがなくなるなどの症状が出てきます。食事に気を付けていても、これらの症状が良く出る人は、ビタミンB₂製剤を続けてとってみるのもよいと思います。
症状が『今』出ている人に、ビタミンB₂製剤だけをお勧めしないように。今出ている症状をすぐに改善するものではなく、慢性的な症状の改善目的として使用します。摂取を継続することで頻繁に症状が出ていたものが、少なくなってくるよ~というものです。
多く含む食品:うなぎ、干しシイタケ、納豆、アーモンドなど。
ビタミンB₆(ピリドキシン、ピリドキサール)
主にタンパク質・脂質・炭水化物代謝に、補酵素として働きます。神経伝達物質代謝、ホルモン調節因子としても働く。
不足すると、湿疹、口角炎、舌炎、貧血、聴覚過敏、免疫力低下など。
ビタミンB₆だけは、過剰摂取で、神経障害、筋肉が弱くなるなどが起こることがあるので、摂取上限量が決まっています。
ビタミン剤や栄養剤の多種同時摂取をしないように注意しましょう。
多く含む食品:鶏肉、🐟、レバー、さつま芋、バナナなど。
ビタミンB₅(パントテン酸)
アセチルコリンの合成に補酵素として働きます。腸管の動きをよくする働きもあります。不足することは稀です。過剰症もありません。
多く含む食品: 鶏レバー、卵、豆腐など。
ビタミンB₁₂(シアノコバラミン)
葉酸と共に赤血球の分化と成熟、DNAの合成に必要なビタミンです。不足するとDNAの合成に障害が起きて、赤血球の成熟が不完全になり、巨赤芽球(成熟していない大きな赤血球)が血液中に流れて、『巨赤芽球性貧血』が起こります。ビタミンB₁₂は、胃の胃酸と酵素の活性により、遊離して初めて働きます。胃癌などで胃の全摘出や、胃酸が出ない病気などの場合は、この反応が起こらないので、食事から十分な量を摂取できていても、貧血を招きます。サプリメントの摂取や、医療機関での注射などで補います。
末梢神経の傷を修復する働きもあります。不足すると、末梢神経障害を発症することがあります。
ほんのり赤色をしているので、目薬に配合されている場合、薬液が薄赤色をしています。
多く含む食品: レバー、チーズ、卵黄、魚介類など。(植物性食品には含まれていない)
ナイアシン
ニコチンアミドとニコチン酸アミドの総称。糖質、脂質、タンパク質の代謝、あらゆるエネルギー代謝に補酵素として働きます。体内でトリプトファンからナイアシンが作られるので、トリプトファンを含む食品を摂取することで補えます。
不足することは稀ですが、不足すると、『ペラグラ』を発症します。発症した方が来店されることはほぼ、ないと言っていいでしょう。症状がひどいので。医療機関に直行だと思います。
『ペラグラ』
赤黒い発疹が、手、足、首、顔に左右対称に現れます。一見、外用消炎鎮痛薬を使用した時の副作用の光線過敏症に似ています。日光に当たると悪化します。口腔内の炎症や胃腸障害が起こることがあります。進行すると、脳機能不全(せん妄や記憶障害など)を起こすこともあります。
肝代謝に役に立っているビタミンなので、普段からお酒を飲んでいる方にはオススメです。
ビタミンB製剤やサプリメント、肝臓水解物、栄養ドリンク、シリアルなど、様々な製品に配合されています。
トリプトファン・ナイアシンを多く含む食品: 鶏むね肉、鶏ささ身、、バナナ、大豆製品、マグロ、落花生、マイタケなど。
葉 酸
ビタミンB₁₂と共に赤血球の分化と成熟、DNAの合成に必要なビタミン。アミノ酸代謝にも働きます。特に、妊娠初期に重要(※)です。新生児の神経管閉塞障害のリスクを減らすことがわかっています。
※妊娠を望む方、妊娠初期(1~3カ月まで)の方に推奨される葉酸量は、一日400㎍とされています。食事だけで摂るのはなかなか難しいので、サプリメントがお勧めです。
多く含む食品: レバー、卵、トウモロコシなど。
ビタミンC(アスコルビン酸)
抗酸化作用、皮膚のメラニン色素生成を抑える作用、コラーゲン組織を安定させる働きがあります。すでにできてしまった濃いシミや、肝斑、そばかすなどを消す作用はありません。薄いシミや、できたてのシミには、ある程度効果が期待できるとされています。
不足すると、免疫力が低下したり、シミ、そばかすができやすくなったりします。また、長期不足が続くと、体内のコラーゲン組織が不安定になり、血管の弾力性が失われ、血管が破れやすくなります(壊血病)。
また、鉄分の吸収をよくする作用もあります。
多く含む食品: ピーマン、キウイフルーツ、ブロッコリー、加熱したジャガイモなど。
脂溶性ビタミン
油に溶けやすいビタミンなので、油で調理をすると体内で吸収されやすいです。身体の中に溜まりやすいので、サプリメントなどでの過剰摂取には気を付けましょう。
ビタミンA(レチノール)
β‐カロテンは、体内でビタミンAとなるプロビタミンAです。
皮膚や粘膜を正常に保ち、目の組織の正常な分化や機能の補助、抗酸化作用もあるとされます。
不足すると、粘膜が荒れたり、夜、目が見えにくくなってきたりします(夜盲症)。
過剰症では、皮膚がカサカサして剥がれる、脱毛、妊娠初期では胎児奇形になる確率が上がります。
多く含む食品: 肝油、レバー、バター、ニンジンなどの緑黄色野菜
ビタミンD
ビタミンD₂(エルゴカルシフェロール)と、ビタミンD₃(コレカルシフェロール)とがあり、腸管からのカルシウム吸収、腎臓でカルシウムとリンの再吸収などの働きをします。免疫力も高めるといわれています。
ビタミンD₂:きのこ🍄に多く含まれる
ビタミンD₃:魚🐟の肝類やバターなどに多く含まれる
ビタミンDは食物からの摂取だけではなく、体内で作ることができます。皮膚に紫外線🌞を浴びると、体内でコレステロールからビタミンDが合成されます。ただ、ビタミンDが働くためには、活性型ビタミンD₃に変換される必要があります。食事から摂取したビタミンDや、体内で合成されたビタミンDは、肝臓での酵素代謝によってビタミンD₃に変換します。腎臓で更に酵素代謝を受けて、活性型ビタミンD₃に変換します。
カルシウムをいくらたくさん摂っても、ビタミンDがなければ吸収されません。もちろん、逆にビタミンDがたくさんあっても、カルシウムが不足していれば同じことです。
食事からのビタミンD摂取だけでは不足しやすいので、やはり紫外線🌞にあたることが大切。
カルシウム不足を気にして、カルシウム剤やサプリメントを求めて来られた方には、併せてビタミンDの必要性、紫外線にあたることの必要性も伝えましょう。カルシウム剤、カルシウムサプリメント、牛乳やシリアルなどにビタミンDが配合されているものもありますが、だからといってそれに頼って、紫外線をほぼ浴びない生活(長期)をしていると、不足していきます。不足すると、カルシウムの吸収もできなくなり、骨粗しょう症を発症したり、歯が弱ってきたりします。
過 剰 症
カルシウムの吸収が促進され過ぎることによって、高カルシウム血症になる恐れがあります。紫外線を浴び過ぎて過剰になることは、ほぼないといわれています。体内で合成されるビタミンDは、十分な量になると、合成が抑えられるようになっているからです。
医薬品との相互作用
医療機関にかかっている方は、服用している医薬品との相互作用(薬の作用を弱めたり、強く出たりすること)がある場合があるので、主治医に相談の上、摂取することが望ましいです。骨粗しょう症治療中の方が、カルシウム剤と共にビタミンD剤も求めて来られることがあります。医師の指示があった場合には、お勧めしましょう。ちなみにカルシウム剤は、薬によっては、同時服用で薬効に影響することがあります。薬との服用間隔を2時間は空けるように指示がなかったか、確認しましょう。指示があっても本人が忘れている場合もあるので(特に高齢の方)、お薬の説明書きを確認してもらうように伝えておくのも良いかと思います。
ビタミンE(トコフェロール)
抗酸化作用や、血流をよくする作用があります。
種類によって吸収率が違います。
・天然ビタミンE(d‐α‐トコフェロール)吸収率(大)
・天然型ビタミンE(酢酸d‐α‐トコフェロール)吸収率(中)
・合成ビタミンE(酢酸dl‐α‐トコフェロール)吸収率(小)
健康な人の過剰摂取での影響は、ないとされています。医療機関で抗凝血剤(血液を固まりにくくするお薬)、抗血小板薬(血小板を集まりにくくするお薬)、アスピリンなどを処方されている方は、出血傾向になる可能性があります。
逆に、普段からビタミンEが含まれる医薬品や、サプリメント、ビタミンE強化食品を摂取している方には、解熱鎮痛薬を選ぶとき、NSAIDsは避けた方が無難化もしれません。
また、脂質異常症治療薬(コレステロール値を下げるお薬)を服用中の方は、薬の作用を弱めてしまうことがあるので、サプリメントは主治医に相談の上、摂取するようにお伝えしましょう。
多く含む食品: ヒマワリ油、紅花油などの植物脂、ナッツ類、魚卵など。
ビタミンK
血液凝固因子『プロトロンビン』や、骨のカルシウムの定着、インスリンの分泌などに関わる『オステオカルシン』の合成に重要。
不足することは稀ですが、出血が止まりにくくなったり、骨がもろくなったり、インスリン分泌量が減少したりします。
日常で過剰摂取になることは、ほぼありません。ワルファリン(抗血栓薬:血栓をできにくくするお薬)服用中の方は、作用を弱めてしまうので注意。
多く含む食品: 豆類、納豆菌、肉類、卵、海藻、クロレラ、青汁など。
ミネラル
ミネラルとは、元素の中の、酸素、炭素、窒素、水素以外の元素を指します。特に難しく考えなくていいです。
体内に比較的多く存在しているミネラル
※サプリメントや栄養剤に配合されているものを対象に紹介しているので、必須も必須な『ナトリウム』もミネラルですが、省略しています。
カルシウム(Ca)
骨と歯の構成成分であり、また、血液中にも存在して重要な働きをしています。骨は主にカルシウム(無機質)とコラーゲン(有機質)からできています。どちらが足りなくなっても病気になってしまうんですよね…重要、重要(´・ω・`)。
カルシウムだけが少なくなることで発症する病気 → 骨軟化症
カルシウム、コラーゲンの両方が少なくなることで発症する病気 → こつしょしょ…骨粗しょう症
詳しくはこちら → 骨粗しょう症
サプリメントやカルシウム剤に配合されている、骨を作るのに必要な他の成分もあります。
マグネシウム(Mg)
・破骨細胞と骨芽細胞を活性化させる
・パラソルモンや、活性型ビタミンD₃の調整
MBP 乳塩基性タンパク質(Milk basic protein)
・骨形成を促進する
・カルシウムが骨に定着するのを助ける
CBP ホエイ(乳清)たんぱく
・骨形成を促進する
・カルシウムが骨に定着するのを助ける
一般の方も、『カルシウム』はよく知っています。が、MBPやCBPはあまり聞きなれないのでよく質問されます。覚えておきましょう。基礎編で説明しましたが、質問されて
「骨形成を促進し、カルシウムが骨に定着するのを助けます」…なんて説明の仕方をしないように、気を付けましょう。
激しい運動や体を酷使する仕事をしている方で、筋肉疲労と共に、大量の発汗でカルシウムや電解質(ナトリウム、カリウム)を失うと、こむら返りが起こりやすいといわれています。電解質調節の経口補水液を気を付けて摂っていても、こむら返りがひどいという方に、カルシウム剤をお勧めしてみたら、症状が治まってきたと言われたことがあります。だからといって、『こむら返りにはカルシウム』でもない場合も多々あるので、一対症法として覚えておいても良いかと思います。
医薬品との相互作用
ビタミンD『医薬品との相互作用』参照。
過剰摂取により、高カルシウム血症を発症することがあります。カルシウム強化牛乳、乳製品、カルシウム剤、サプリメントの併用に注意しましょう。
亜 鉛
多くの酵素の活性に必要なミネラルです。味覚感知(舌の味蕾(みらい)を形成)、精力増進(男性)、子供の成長、細胞分裂などに関わっています。
鉄、銅と拮抗作用にあります。食物繊維も摂り過ぎると、腸管からの吸収が阻害されます。
不足すると、味覚が鈍くなる、皮膚炎、傷の治りが遅くなる、胃腸機能の低下、免疫機能の低下など。
過剰摂取は、鉄、銅不足になることによって、鉄欠乏性貧血、免疫障害、神経症、HDL‐C(高比重リポ蛋白コレステロール:善玉コレステロール)の血中濃度低下などを発症することがあります。
鉄
赤血球形成の材料となります。ヘモグロビンにくっついて、血中を流れ、全身への酸素の運搬、二酸化炭素の回収をする働きをしています。
『ヘム鉄』と『非ヘム鉄』があります。
ヘム鉄
肉、レバー、🐟類、貝類など動物性食品に多く含まれます。吸収率が非ヘム鉄よりかなり良いです。
非ヘム鉄
小松菜、ほうれん草、穀物、植物性食品に多く含まれます。ビタミンCと一緒に摂ることで、吸収が良くなります。
なるべく吸収率の良い『ヘム鉄』のサプリメントからお勧めしましょう。服用していても効果があまり感じられない場合は、医薬品にスイッチしても良いかもしれません。
また、副作用としてヘム鉄では便秘や下痢、非ヘム鉄では胃のムカつき、鉄剤共通で便の色が黒くなることがあるなどもお伝えしておきましょう。
鉄欠乏性貧血には、効果がありますが、その他の溶血性貧血、巨赤芽球性貧血、再生不良性貧血には、効果は期待できません(鉄不足が原因ではないから)。
貧血についての詳しい説明はこちら → 貧血